Interview 02

漁業の未来を支える仲間として
これからも挑戦を続けたい

野付漁業協同組合
お話を伺った方:参事 大槻 文人氏
インタビュアー:出雲井 亨
道内でも有数の水揚げ量を誇る野付漁業協同組合では、1980年代からNJCの漁協向け業務システムの導入を進め、漁業者の労働環境改善や生産性向上に取り組んできました。知床半島と根室半島の間に腕を伸ばすように広がる野付半島では、ホタテや鮭を中心に年間を通じて漁が行われています。

漁業者の経営をシステムで支援

日本事務器さんとのお付き合いは、もう40年以上になります。私が組合に入職する前、おそらく昭和50年代からのお付き合いです。

最初に導入したのは、販売・精算業務システムです。漁で獲った魚は、すぐに市場で売買されます。その結果に応じて買受人への請求書を発行したり、水揚げ額から手数料などを控除して漁業者に分配したりといった事務作業が必要になるのですが、それを自動化するシステムでした。野付の主力魚種はホタテですが、これは共同でやる商売です。5人の漁業者が共同で船を買い、水揚げ額を出資割合に応じて分配する必要があり、複雑な計算が必要になるのです。

その後、FAXシステムを導入しました。組合員である約300人の漁業者の皆さん一人ひとりの自宅にFAXを設置して、その日の水揚げ額が分かるようにしました。漁を終えて家に帰ると、夕方にはその日の水揚げがどのくらいだったかがFAXで届くのです。以前は月1回の集計でしたが、毎日水揚げ額が分かるようになったことで漁業者の皆様も漁の計画が立てやすくなりました。

他にも漁業者のお金まわりを管理する信用業務や基幹システムなど、日本事務器さんとともに、さまざまなシステムを導入してきました。

仕事の枠を超えた関係性

日本事務器さんとのお付き合いで印象に残っているのは、仕事そのものよりも、どちらかというと終わった後に飲んだことですね(笑)。システムの入れ替え時などは、漁協内の電算室で日本事務器の皆さんと夜の9時、10時くらいまで一生懸命仕事をして、「今日はここまで」となったら、会議室の机にビールや日本酒、そしてエビやホタテをずらりと並べて宴会がはじまります。当時の日本事務器の担当はSさんという方でしたが、酒豪で、飲んだ後は宿に帰らず漁協内の当直室に泊まることもありました。

これは先輩から聞いた話ですが、宴会の後、夜中にぱっと目が覚めたら、当直室に寝ているはずのSさんが見当たりません。真っ暗な漁協内を探して歩くと、電算室の方からラインプリンターのような音が聞こえてきたそうです。こんな夜中まで仕事をしているのかと感心してのぞいてみると、そこにもいません。よくよく探すと、聞こえていたのは風呂につかったまま寝込んだSさんのイビキだったそうです。真冬だったので風呂のお湯はすっかり冷めていて、あわてて起こしたそうです。

昔はコンピューターの性能もあまり高くなく、今のようにリモート環境も充実していませんでしたから、公私にわたって深いお付き合いをしていました。発注者とベンダーさんという立場ではありますが、一緒に漁業者のためのシステムをつくり上げる仲間のような存在だと思っています。

電算室のサーバーから毎日約250件、漁業者にFAXを送信している

デジタルで漁業の未来を切り拓く

地球温暖化は漁業にも大きな影響を与えています。水温が上がり、これまで獲れていた魚が獲れなくなったり、ブリやマグロのような昔はこのあたりにはいなかった魚が獲れるようになったりと、野付の海でも変化を感じています。

そんな変化の中で、昔からのやり方をそのまま繰り返すだけでは、いずれ行き詰まるかもしれないという危機感は持っています。そこで、若い漁業者を中心に漁業活動をデジタルで記録し、これまで経験と勘でまかなっていた部分をきちんと引き継いでいこう、という取り組みを進めています。

具体的には、日本事務器さんの「MarineManager +reC.」というモバイルサービスの開発に協力しています。これは、日々の漁業で感じた海の変化や気付き、アイデアなどをスマホアプリで記録できるようにするサービスです。船の上で入力した漁業活動のデータはクラウドに蓄積され、ビジネスインテリジェンスツールによって分析できます。

これまで、基本的に船の上のことは漁業者の頭の中にしか残っていませんでした。でもいつまでも経験と勘では、なかなか次世代に伝承できません。例えば「海水温がこのくらいだと、ホタテにこんな影響が出る」といった経験値をデータとして可視化することで、次の打ち手を考える材料になるのではないかと期待しています。

100年を迎える日本事務器に向けて。

一緒に挑戦を乗り越える仲間でいてほしい

野付漁業協同組合は、2008年に創立100周年を迎えた

実は、うちの漁協も平成20年(2008年)に100周年を迎えたんですよ。この建物の外に記念の石碑が建っています。考えてみると100年のうち、私たちが携わっているのは、せいぜい数十年。過去の先輩たちが積み上げてきたものがあるからこそ、今があるわけです。その意味では、日本事務器さんの歴史にも敬意を表したいと思います。

これから、先輩たちが築いてきた組織を、私たちが若い世代に受け継いで行かなければなりません。コロナ禍でリモートワークを余儀なくされ、昔のように一緒に顔を突き合わせて仕事をしたり、一緒にお酒を飲んだりする機会も失われてしまいました。でも、日本事務器さんには、これからも近い距離で、私たちと一緒に挑戦をしてくれる仲間でいてほしい。それを期待したいと思います。

担当営業から:
数十年に渡りNJCとのお付き合いの中で、組合職員の皆様とのコミュニケーションが円滑に進むようさまざまなご配慮をいただき、感謝しかありません。
長年ご利用いただいている業務システムの安定稼働はもちろんのこと、スマート水産化に向けた「MarineManager +reC.」を通した新しい取り組みについても、漁業者の皆様にもご満足いただけるよう、今後も「仲間」としてサポートいたします。
この度はインタビューにご快諾いただいたこと、改めて感謝申し上げます。

佐々木 丈(北海道支社 アカウントマネジメント部 アカウント対応グループ マネージャ)